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「誰よ……今、声を出したヤツ……どこにいるのよ……」
いよいよ本格的に身の危険を感じ、ガクガクと震え出した。
精一杯の強がりで発した声も、どこか弱々しい。
顔だけは女の方を向いたまま、瞳だけをせわしなく動かして室内を隅々まで確認する。
「どこって……舛澤 聖奈さん。あなたの目の前にいるじゃないですか」
透き通るような綺麗なテノール。
声だけを聞けば、知的な若者の存在を感じさせるが、どこを見ても、そんな人影は見当たらない。
いいや――それどころか、その声のする方には、あの“女”しかいない。
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