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瞼を強く閉じ、胸を大きく上下させて痛みに耐えている間に、一歩、また一歩と歩み寄る女は、聖奈の顔の真横で立ち止まった。
人の気配を察知し、苦痛に顔を歪ませながらも薄目を開けると、目の前に顔面があった。
「ヒッ!」
思わず悲鳴が漏れたのは、自分を覗き込む相手の顔があまりにも近かったせいだけではない。
その顔が――「ホラ。目の前にいたでしょ?」――整った綺麗な顔をしているとはいえ、まごうことなき“男”だったからである。
彼は頭に手をやると、スルリとカツラを取り外した。
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