第一話

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“靴を履いていない?”  足の裏に直接感じるヒンヤリとした床の感触。  靴どころか、靴下さえ脱がされている。  暗くてよく見えないので、両手をつかい全身を確認してみると、着ていた筈のジャケットも脱がされていた。 “ジャケットの中には財布が……”  そこでハッとなった。  飲み屋から出た後、酔った足取りで大通りまで出た。  タクシーを拾おうと片手を挙げていたところで、急に背後から首に腕を巻きつかれた。  友人か知人の誰かが、たまたま繁華街で自分の背中を見つけて、ふざけてやったものだと思い、「やめろよ」と笑いながら、その腕を軽く叩いたのだが、そのままギュッと強く絞め上げられた。
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