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仰向けで、自分を見上げている聖奈に向かって、男は左手を差し出した。
しかし、彼女は、男が右手に持つナイフを警戒し、その手を取らずに思いっ切り叩いて退けた。
「アンタが鬼?」
やたらと整った顔を睨みつけると、彼は叩かれた手を摩った。
「僕じゃありませんよ」
首を横に振った男は、ポケットに手を突っ込んで小さな何かを摘まみだすと、それを月明かりに照らした。
人差し指と親指の間にあるのは黄色の粒。
彼は躊躇うことなく口に含んだ。
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