#.02 亡霊からの手紙

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   そいつはいい――感心と呆れが入り混ざった溜め息をつく。瞬矢自身、今までそのようなこと気にも留めず過ごしてきたのだ。 「でも、そんな簡単に上手くいくとは限ら……な……」  それは、突如生じた異変。  言い終える間もなく、キィンという甲高い耳鳴りがし、瞬矢の脳内神経を全く別なものが支配する。  視界にちらつくのは、先ほどの烏揚羽。 「――っ、くそ! なん、だ……」  次第に酷くなる耳鳴りに頭を抱えよろめく。 「……逃がさない」 「えっ?」  いつもと違う虚ろな様相で発せられた瞬矢の言葉に、思わず目を丸くして素っ頓狂な声を上げる茜。  「君たちが僕を……」そう独り言のように呟いた瞬矢は、1人ふらふらと歩きだす。 「ち……ちょっと!?」  だが、そんな茜の声すら耳に届かないといった様子で歩き続け、やがて遊歩道からほど近い桜の木の下でぴたりと足を止めた。 「ここだ」  瞼の奥で、暗がりの中冷たく笑みを浮かべる弟の顔が自身と重なる。 「どうして……?」  俯いたまま一言そう呟くと、悲しげに足元を見つめ続けていた。春の陽気を孕んだ心地よい風が、さぁ、と吹き抜ける。  
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