#.03 目撃者

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 1  2日前――。  時刻はすでに午後の2時をまわっていた。 「おかしい……」  署内の一室で調書を読み返しながら香緒里は独り言のように呟く。何故ならば目撃者である男、六野(りくの)の証言に引っかかる点があった為だ。  それは中川の写真を見せた際のこと、わずかに動揺が見られたからだ。香緒里はそれを見逃さなかった。  それだけではない。 『犯人は20歳くらいの背が高い黒髪の男。容姿端麗――』  そう。あの時刻、遠くからほんの一瞬目撃したにしてはあまりにも詳しすぎる。 (この男は何かを隠している)  事実を確かめるべく、香緒里は六野のもとへ再度話を聞きに行くことにした。       **  数年前からホームレスとなっていた六野は、その日も事件現場からほど近い河川敷の橋げたで煙草をくゆらせ、何やら思い詰めた様子で手の中のメモを見つめていた。  香緒里の存在に気づいた六野は、その何かが書かれた2つ折りのメモを慌ててポケットに隠す。 「なんだい、こないだの刑事さんか」  軽く会釈をした香緒里は、やおら核心に迫った問いを切り出す。 「本当のことを話してください。あなたは何を知ってるんです?」  
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