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――そして現在。
香緒里は現場となった公園で斎藤 瞬矢と対峙していた。
「茜、少しあっちへ行ってろ」
初め不服そうにむぅ……っとむくれていた茜だった。だが、現状に漂う空気がそのようなことを言っていられるものでないと悟り、彼の言葉に渋々と離れる。
すぐ近くにあったベンチへ腰掛けると、瞬矢はジャケットから煙草を取り出す。
煙草の先端でゆらゆらと燃えるライターの火に目を伏せ、軽く1センチくらいを味わう。
「で、警察がなんの用?」
ゆっくりと煙を吐き出し、瞬矢はライターの火が消えると同時に香緒里を見上げ訊ねる。
「先日ここで起きた事件について少し」
31日の所在について香緒里が訊ねると、煙草から立ち上る煙を眺め思い出すような口調で瞬矢は言う。
「あぁ、新聞に載ってた。アリバイってやつだろ? その日は1歩も外出してねーからなぁ」
「じゃあ、それを証明できる人は……」
「ま、いないだろうね」
さほど取り乱した様子も見せず、あまりにもあっけらかんとした態度に香緒里の表情は自然と険しいものになる。
「言っとくけど、俺はやってない」
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