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2
日は傾き、瞬矢はベンチに腰掛けたまま桜の木の向こう側に広がる河川敷をぼうっと眺めていた。
残りわずかとなった煙草に、今一度口をつける。
「【S】か……」
溜め息混じりに吐き出された台詞は、空中で紫煙と共に消えていった。
(S、刹那……お前の目的はいったい……)
手にした煙草の先端でくすぶる灰を見つめながら、瞬矢は思考を巡らす。不意に背後から聞こえた覚えのある声に視線を送る。
「手紙のこと、言わなくてよかったの?」
瞬矢は、ふっと目を伏せ、聞いてたのかと言わんばかりの笑みを浮かべ答えた。
「ああ。それに……」
どうしたことか、伏せた睫毛の奥に不安定な光をちらつかせ、瞬矢は言葉を濁す。
「?」
不思議そうに小首を傾げる茜を瞬矢は横目で捉え、口元を緩ませ今さっき飲み込んだ言葉の変わりにこう続ける。
「いや、なんでもない。行こう」
備え付けの灰皿に灰を落とすと立ち上がり、煙草の火をもみ消し歩きだす。
オレンジ色の西日を背に振り向いた時だった。
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