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名も知らぬ男の言葉に、瞬矢は眉をひそめ訝しむ。
「でももし、もし本当のことが知りたいと思うなら――」
その男はオレンジの上着の右ポケットを探りながらこう続ける。
「これを……、ここに【S】の全てが……」
やがて男は、上着のポケットから1枚のありふれたメモ用紙を取り出し、瞬矢に渡す。
2つ折りにされたメモ用紙を覗き込む。そこには住所と、何かの場所を示す地図のようなものが走り書きしてあった。
「どうして、これを俺に?」
男は、訝しげに首だけをほんの少し傾けた瞬矢を目視する。何かを思い出し、懐かしむかのように。
そして、約数秒の間を空け男は言う。
「あんたには、【真実】を知る権利がある」
そう言い残すと男は向き直り、公園の方へ歩きだす。やがてその姿は木々に隠れ見えなくなった。
果たして、男の宣った真実とは何であろうか。
残された2人は、しばらくの間、手元のメモとその向こうに続く舗装された道を見つめていた。まるで、これから自分たちが歩くであろう運命を見据えるかの如く。
わずかに顔を出していた太陽は沈み、河川敷に冷たい風が吹き抜ける。
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