#.03 目撃者

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   名も知らぬ男の言葉に、瞬矢は眉をひそめ訝しむ。 「でももし、もし本当のことが知りたいと思うなら――」  その男はオレンジの上着の右ポケットを探りながらこう続ける。 「これを……、ここに【S】の全てが……」  やがて男は、上着のポケットから1枚のありふれたメモ用紙を取り出し、瞬矢に渡す。  2つ折りにされたメモ用紙を覗き込む。そこには住所と、何かの場所を示す地図のようなものが走り書きしてあった。 「どうして、これを俺に?」  男は、訝しげに首だけをほんの少し傾けた瞬矢を目視する。何かを思い出し、懐かしむかのように。  そして、約数秒の間を空け男は言う。 「あんたには、【真実】を知る権利がある」  そう言い残すと男は向き直り、公園の方へ歩きだす。やがてその姿は木々に隠れ見えなくなった。  果たして、男の宣った真実とは何であろうか。  残された2人は、しばらくの間、手元のメモとその向こうに続く舗装された道を見つめていた。まるで、これから自分たちが歩くであろう運命を見据えるかの如く。  わずかに顔を出していた太陽は沈み、河川敷に冷たい風が吹き抜ける。  
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