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「……いや、ないない」
(だって、なぁ……ピンクだぜ?)
その脳裏によぎった考えを否定するかの如く右手を振り、ごろりとガラステーブルに背を向ける。
その時、軽快な靴音がして、勢いよくドアが開く。
「瞬矢ぁー、いる?」
開いたドアの向こうからは、丸く襟首があいた淡いピンクのシャツにベストを着た茜が顔を覗かせる。
「お……おう!」
ソファから転げ落ちそうになりながら、慌てて座り直し、しどろもどろな返事を返す。
(つか、なんで俺の方がかしこまらなきゃならねーんだ?)
ふと感じた矛盾に、瞬矢は内心独りごちて肩の力を抜き茜を見やる。
「せめて連絡くらいしろよな」
茜の後を追うようにソファから立ち上がり、その背中に声を投げかけた。
果たして聞こえているのか、ずかずかと上がり込み、さも自分の家のように振る舞う。
流し台の脇に備え付けられた小さめの冷蔵庫を開け中を覗き、そこで茜の思考は停止する。
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