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私はユヒナ。あまり褒められたことではないが、新米の堕天使だ。任務の遂行中に禁忌を犯してしまい、堕天使となった。
「ユヒナ。」
唐突に呼び止められ、私は振り返った。
「…!ノエル様!!」
ノエル様は私が堕天使となった時の任務を共に行っていた、五つ上の階級の大天使だ。
「…今回の一件で貴方は堕天使となり、私も階級を落とされました。」
「…誠に申し訳ありません。私の身勝手な行動のせいでノエル様にまでご迷惑をお掛けしてしまって…」
「その件については構わないわ。上級天使の多くは私を邪魔だと思っていたようだし、どのみち近々難癖つけて追放されていたでしょうね。それより私が気になっているのは、貴方が何故あんな事をしたのかよ。」
「---どうして人間なんかを助けたの?私達には良心以外の感情は存在しないのに。」
------- 半年前 -------
「優奈!早くしないと、また外周増やされちゃう!」
「待ってハル、靴紐が絡まっちゃって…」
私は任務の間は、人間界で目立たぬよう『優奈』という名前で生活していた。今回“お迎え”に来たのは、このハルという少女だ。
「…初めまして!私は春菜。ハルでいいよ!」
明るくてフレンドリーな性格の春菜は、中途半端な時期に転校してきた私にも積極的に声をかけてくれた。…それが、自分を“お迎え”に来た天使だとも知らずに。
春菜の頭には大きな腫瘍があり、その上本人はそれに全く気づいていない。春菜の“未来の書”によると、そのまま気づかずに死んでしまうらしい。死亡予定日は11月17日。私は春菜と同じ陸上部に入り、春菜との交友関係を深めた。
「…遅い!外周五周追加!さっさと行ってこい!」
「「は、はいっ!!」」
厳しい顧問の声に首を竦めながら、私達はタッタッタッ、と子気味良いリズムで走り出した。
「もう、優奈のせいだからね?」
ぷくぅ、と頬を膨らませる姿がつい面白くて、私は思わず吹き出した。
「あーひっどーい!ジュース一本で許してやろうと思ったけど、こうなりゃアイスも追加してやる!!」
そう言うが早いか、春菜はスピードを上げてみるみる私から離れていった。
「こっこまでおっいでー!」
「全国区選手に初心者が追いつける訳ないでしょ?!」
「あんまり遅いと、また外周追加されちゃうよ~」
「待ってよ、ハルー!」
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