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近くの海から聞こえる波の音を背に、私と京子ちゃんは駅へと続く坂を上がる。
「いやー、今日からウチらも高校生だねえ」
「ふふっ。楽しみだなあ。高校でもよろしくね、京子ちゃん」
「あいよ。こちらこそよろしく」
赤ぶち眼鏡をかけ、中学時代から変わらない三つ編みを揺らす私の親友、陽田京子ちゃん。小学校の頃からの付き合いで、ずっと前から一緒に登校し続けている。
「そういえば真裕は、高校でも野球部に入るの?」
「もちろんだよ! そのために女子野球部のある高校を選んだんだから」
私は鼻息荒く、京子ちゃんの質問に答える。
「ま、そうだよね」
「京子ちゃんも入ろうよ。中学もソフト部だったんだし」
「えー。お誘いはありがたいんだけど、他にもやりたいことあるしなあ。せっかく女子高生になったんだし」
京子ちゃんは腕組みをし、眉を顰める。私と京子ちゃんは小学校の時、同じ学童野球のチームに入っていた。
「やりたいことって、例えば?」
「そりゃあ一番は恋でしょ。天下の女子高生なんだから、実りある青春を送らないと」
「え? でも京子ちゃんの恋愛対象は、画面の中にしかいないんじゃないっけ?」
「う……、それはだねえ……」
「しかも最近は、男同士もいけるとかなんとか言ってた気が……」
「そうなんだよ! ウチも分かってきちゃったんだよ、その良さが!」
私の言葉に食い気味に反応する京子ちゃん。私の額にぶつかりそうな勢いで、顔を近づけてくる。
「昨日なんか紘汰様と進之介様という、最高にベストマッチなカップリングを見つけちゃったの! 真裕はどっちが攻めだと思う?」
「さ、さあ……。私はどっちも知らないから何とも……」
「やっぱり紘汰様が攻めかな。なんたって神様だしね」
「そ、そうなんだ……」
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