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「京子ちゃん、野球部見に行こうよ」
入学式が終わり、私は早速野球部の見学に行くことにする。京子ちゃんとは同じクラスになり、正直かなりほっとした。
「相変らずやる気満々だね。でもウチ、まだ入るって決めたわけじゃないんだが」
「良いじゃん、行こうよ。別に入部するわけじゃないんだしさ」
渋った顔をする京子ちゃんの肩を揺らし、私は何とか一緒に連れていこうとする。実を言うと、一人で行くのは非常に心細い。怖い先輩とかに捕まったら嫌だし。
「入部するわけじゃないって言うけど、こういうのって、行ったら確実に入部させられる流れに持っていかれるでしょ」
「そんなことないって。ほんとに見るだけだから」
「し、信用ならない」
中々首を縦に振ってくれない京子ちゃん。そこへ、一人の女子生徒が声を掛けてくる。
「陽田さん、どこか部活見に行くの?」
女子生徒は既に京子ちゃんと仲良くなっているみたいだった。私と同じくらいの背丈で、左右にバランス良く跳ねた髪が、雄雄しくも可愛らしい。
「えっと……」
私は困惑気味に女子生徒の顔を覗く。すると京子ちゃんが名前を教えてくれた。
「笠ヶ原さんだよ。笠ヶ原祥さん。ウチの隣の席なの」
「祥で良いよ」
「そう? ならウチのことも京子で良いよ」
「分かった。それでそっちの子は……」
祥ちゃんが私の方を見る。すかさず私は自己紹介した。
「あ、私の名前は柳瀬真裕。京子ちゃんとは幼馴染なの。よろしくね、祥ちゃん」
「そうだったんだ。こちらこそよろしく、真裕」
私は祥ちゃんと握手を交わす。祥ちゃんは女子にしては落ち着いた声色をしているからか、他の人たちよりも高校生として相応しい雰囲気が出ている。
「私たちは今から、野球部の見学に行くつもりなんだ」
「ウチはまだ行くって決めてないんだけど」
京子ちゃんは顰め面で私を見る。
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