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思わず後をつける櫻子。尾行に気付かない寅吉は、そのまま屋上への階段を昇る。
暗い顔をしながら屋上のフェンスから下を見下ろす。見る人が見れば自殺志願者だと疑うかも知れない。そう、櫻子もそう感じたのだ。
「待ちなさい!そこの…ピエロの少年!若い命をこの程度のことで散らしてどうするのですか!どんなに惨めなピエロだって…笑って生きるって選択肢はある筈ですよ!」
…何やら、とんでも無いほど無礼な事を言われている。寅吉はただ、気分転換に屋上から下を見下ろしていただけなのだが…。
それでも櫻子の説得は止まらない。
「いい?長い人生で辛いことは沢山あるかも知れない…でもね、生きてればきっといい事だってあるんだから!諦めちゃダメ!貴方がどんなに惨めで無様で情け無いピエロだって…生きる権利はあるんだから!」
「あの…突然、何を言ってるの?俺はただ、気分転換に屋上の空気を吸いに…」
「いいのよ、言い訳なんかしなくったって!私…偶然見たのよ、貴方のピエロっぷりを!それはもう、見事なまでのピエロっぷりを…ね!だから貴方の気持ちは分かるの!」
「……」
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