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1話
肩を叩かれて、居在家日向(いざいけ ひなた)は目を覚ました。右側に座っている白髪の老婦人が心配そうにヒナタを見ていた。
「エスク・セ・ヴァ?」
ヒナタの知らない言葉だった。
「サンキュー・アイム・ファイン」
ヒナタが英語で話しかけたが、老婦人には通じていないようだった。
すでに呼んでいたのか、日本人のフライト・アテンダントが近づいてきた。そばに立った小柄な女性に老婦人が早口で説明した。
フライト・アテンダントがヒナタに話しかけた。
「こちらの方が、あなたの体調を心配されています。だいぶうなされていたとおっしゃられていますが」
「何か夢を見ていたような…… もう大丈夫です」
「高いところが、お嫌いとか?」
「わりと平気な方です。疲れたんだと思います。心配をおかけしてすみません、と伝えてもらえますか?」
女性が柔らかい声で、老婦人に説明した。ヒナタが老婦人に頭を下げると、笑顔を見せて鷹揚にうなずいた。
「何かお飲み物をお持ちしましょうか?」
「いえ…… ちょっとトイレに……」
フライトアテンダントは会釈をして、戻っていった。
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