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 肩を叩かれて、居在家日向(いざいけ ひなた)は目を覚ました。右側に座っている白髪の老婦人が心配そうにヒナタを見ていた。 「エスク・セ・ヴァ?」  ヒナタの知らない言葉だった。 「サンキュー・アイム・ファイン」  ヒナタが英語で話しかけたが、老婦人には通じていないようだった。  すでに呼んでいたのか、日本人のフライト・アテンダントが近づいてきた。そばに立った小柄な女性に老婦人が早口で説明した。  フライト・アテンダントがヒナタに話しかけた。 「こちらの方が、あなたの体調を心配されています。だいぶうなされていたとおっしゃられていますが」 「何か夢を見ていたような…… もう大丈夫です」 「高いところが、お嫌いとか?」 「わりと平気な方です。疲れたんだと思います。心配をおかけしてすみません、と伝えてもらえますか?」  女性が柔らかい声で、老婦人に説明した。ヒナタが老婦人に頭を下げると、笑顔を見せて鷹揚にうなずいた。 「何かお飲み物をお持ちしましょうか?」 「いえ…… ちょっとトイレに……」  フライトアテンダントは会釈をして、戻っていった。     
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