寒さにも負け

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夏子は夫に冬が来る前に言われていた。「おまえって、コタツの周りに生活必需品をグルリと陳列していて、一日中トイレとお風呂と俺のたまに食べる夕食の準備以外は殆ど入りっぱなしだよな。」確かにそれは正解だった。買物はネット注文して玄関先には出て行くが、運動量が寒いと減る。何をしているのかと思えば朝から大好きなサスペンスドラマを観ては昼食はカップ麺とか簡単に済ませ、眠くなったら寝てしまい、目覚めたら、次のサスペンスを観続けている。たまには掃除しろよと言われても、なかなかやらないので、年末の大掃除は夫が仕方なく休みに入ってからやっている。冬は大掃除があるので、それを期待してグータラ生活を続けてしまっている。夫が掃除機をかけながら、「おまえって、コタツより木にぶら下がってるナマケモノだよな。寒い時期はナマケモノもコタツにはいるか。」などとブチブチ言いながらも半ば諦めかけ掃除に精を出す。新婚の頃には年末に美容院で髪を結って来て和服を着てしまっているから掃除は出来ないと言ったものだから、ベタ惚れでプロポーズをして、「キミと結婚できたら、僕はキミに何でもしてあげるから。」などと戯言を発してしまったから夫が掃除するのは当たり前感覚になってしまっていたが、ついには「オレ、もう一度主婦らしい女と結婚したいから、オマエ、俺の愛人になってくれないか。」などと笑いながら本気ではないホンネを吐いていた。しかし、離婚する気は全くないほど惚れられているのかと思うほど夫は期待していないが、もしかしたら完璧主婦のような女の家で二人仲良くコタツに入っているかもしれない不安が過ぎり、必需品を並べるのをやめて、本気で整理整頓してみたら、帰宅した夫が「季節外れの台風やら雪も降らないのにホワイトアウトになったらどうするんだ。オマエのせいだ。」と騒ぐので、翌日からシブシブナマケモノ生活に戻った夏子だった。
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