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なのにとても不憫なんだ。とても小さなズレを多く感じてきた。それは普通なら受け取っていいはずの親切や愛情という部分。温かなものから手を引っ込める傾向があるように思える。
「ランバートの事、気にしてるんでしょ?」
ボリスが察するように言った。それにゼロスは、ただ頷いた。
「ランバートって、ちょっとズレがあるっていうか…寂しい感じがするよね」
ぽつりと呟く言葉は皆が感じているのだろう。この言葉を否定する者はない。
「壁までいかないんだけど、少しだけ距離がある感じかな。ほんの少しなんだろうけれど」
「そのほんの少しが大きいな。あいつ、好意を恐れている節がある」
ボリスの言葉をコンラッドが拾う。
好意を恐れる。それは分かる。与える事に惜しみないのに、差し出すと手をこまねく。拒絶ではないだろうが、どうしたらいいか分からない。そんな顔をするのだ。
「経済的にも能力的にも恵まれてるのにね、ランバート。貧乏没落家庭の俺から見ても、時々可哀想に見える事があるよ」
レイバンが珍しくそんな事を言った。
「誕生日ってさ、どんな子供でも特別だろ? 俺の家は貧乏だったけど、貧乏なりに特別だったよ。楽しい気持ちがちゃんと残るし、嬉しい記憶がちゃんとある。普通はそう感じるはずなのに、あいつはその辺が欠落してるんじゃないかな」
的を射た発言だろう。そう思い、ゼロスは息を吐いた。
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