準備(ゼロス)

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「そんなの簡単。ファウストがランバートを連れ出せばいいんだよ」 「俺が?」  突然向いた矛先に声を上げると、オスカルばかりではなくシウスまで頷いている。 「なんで俺が…」 「一番自然じゃん。安息日の朝は一緒に修練するでしょ? その時にさ、なんか誘って連れ出せばいいんだよ」 「三時間は稼ぐのだぞ」  なんて言われても、どうしたものだ。  だいいち誕生日祝いをした翌日に連れ出せば、何か察するだろうに。 「お祝いしたくないの?」 「そういうわけじゃない」  祝ってやりたい気持ちはおおいにある。空気も以前と変わらないくらいになった。昨日の礼もしたい。  何より、多くの者に祝われることであいつが自分を愛せるといい。自分を大事に思えるといい。自己愛がないのなら、誰かの大切な者であると認識してもらいたい。  そういう意識が芽生えれば、簡単に命を投げるような事はしなくなるだろう。 「そうだな。昨日仕事を手伝ってもらった。おかげで決算書が問題なく通ったし、その礼と俺の気晴らしに誘うか」 「やはりあれはあの坊やが作ったものかえ。相変わらず完璧な」 「そうとなれば準備しよう!」  指を鳴らした楽しそうなオスカルにあれこれと任せる事にして、ファウストは部屋に戻った。     
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