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疲れの色の濃いファウストは手に珍しくコーヒーを持っている。食堂の方から出てきた事を考えると、これから残業なのだろう。
「何か、手伝いましょうか?」
思わず言ってしまった。以前雑用をした関係で、ファウストの仕事はそれなりに把握している。自分が関われない部分なら引き下がるが、そうでなければ手伝いたい。
案の定、ファウストは眉根に皺を作った。
「時期的に、決算書ですか?」
「お前、見たように言うな」
「時期的に。手伝いますよ」
しばらく葛藤があったらしいファウストだが、彼もランバートがこうした仕事を得意としているのを知っている。
やがて溜息をついて先を歩き出す。その背を、ランバートはついていった。
騎兵府執務室は相変わらず処理待ちの紙が多い。優先度の高い物から片付けているはずなのに、毎日たまっていく。
一日ずっと書類処理が出来る人ではない。朝議はほぼ毎日、訓練をつけ、他の兵府との会議をしたり、時には地方の責任者が来て話をつめたり。
「決算書は俺がやりますから、他の書類の処理をしてください」
「悪いな」
「たいした事じゃありませんよ」
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