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立ち上がって執務室を出て、ファウストに連れられて修練場の横を通る。
「そういえば俺、体動かそうとか思ってたんでした」
「そうだったのか? 俺で良ければ付き合うが」
「いえ、今日はもう」
明日も仕事だから寝た方がいいだろう。思っていると、不意に頭に手が乗った。
「何かあったか?」
「え?」
「お前が一人で修練場なんて、久しぶりだ。何かあったのか?」
様子を察してくれるように言うファウストに、ランバートは苦笑する。そして思わず思った事を口にした。
「自分の誕生日が分からないって、おかしいですか?」
「ん?」
ファウストまで怪訝な顔をする。これで決定だ、おかしいのは自分だと。
「分からないのか?」
「日付まで認識していなくて」
「祝って貰っていなかったのか?」
「都合のつく日に皆バラバラに祝うので、もういつがそうなんだか」
気遣わしい視線に見られていたたまれない。頭に乗っていた手が優しく撫でるのも恥ずかしい。ブスッとして睨み上げると、笑われた。
「六月だったか」
「はい」
「二十歳か。節目だな」
「えぇ」
「実家に帰るのか?」
問われて、首を横に振る。特にそういう予定はないし、戻ったからといって誰かがいるとも限らない。皆忙しくあちこち行くから。
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