小話①

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シンと静まる部屋の中。 普段は俺の城であるこの家も、今日ばかりは物足りない。 「あぁー」 完璧に風邪引いた。 風邪なんて去年ぶりだろうか。 ふつうならなんてことないことなのだろうけど、 去年とはまず状況がちがう。 一つ目は、下宿中の身である俺は今、一人だということ。 二つ目は、風邪薬のストックを置いてある場所を大掃除のため移動したときに忘れてしまったこと。 三つ目は… 重い頭をぐりんとベッドの中で向きを変える。 見えたのは、今俺にとって一番手近にある外の世界を呼び出す機械。 …そうだよ。スマホだよ。 頭痛いんだよ、こんちくしょ。 ボサボサの髪をカシカシとかき混ぜてから、改めて深呼吸をする。 「ごほっごほっ…」 嘘ついた。 深呼吸すらできませんでした。 一人ムーッと頬を膨らませ、ぬくもりを求めてベッドに潜り込む。 「どうしよっかな…」
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