小話①

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ピンポーン… 来たっ バタバタと掃除機を片付けてから、インターフォンに出て鍵を開ける。 何の癖かわからないけど、あわてて掃除の痕跡を消しベッドに潜り込みマスクを装着する。 ピンポーン… あ。俺しかいないんだった。 「はぁい」 ガサガサの声で返事をしながら玄関のドアを開けると、冷たい空気に晒された体がブルっと震えた。 「みっちゃん!」 「あーらら、風邪かぁ」 ガシッと逞しい腕に抱きつかれていると、クリスは手早くドアに鍵をかけた。 その流れるような仕草に頬を緩める。 すると、クリスはどこか困ったようにやんわりと笑いながら俺の額に手のひらをくっつけた。 「熱は?」 「ないよ?」 「ほんと?」 「……微熱です」 ぷふっとクリスが噴き出した。 笑われた意味がよく分からなくて首をかしげると、由貴の首筋が頬に当たった。 暖かいのでそのままスリスリする。 そうしたらなんか怖い顔で抱きかかえられ、問答無用でベッドに運ばれた。
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