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「あー、ううん、ひとり、なんだ」
知ってる。でも、俺はへぇ、そうなんだって言った。
だって、俺ならひとりで初詣は……来ないかな。それでも、ひとりでも来たかったんだとしたら、やっぱ何かあるのかなぁって。そしてちらつく「季節外れの転校生」なんて言葉を、さっきから何度か頭の中から追い払っている。
俺は何も知らない。噂なんてものは当てにしないから、俺は白崎のことを本当に知らない。白崎に何があって転校してきたのかなんて。親の都合で転校してきたとかなのかどうかも。直接本人から聞くまでは何もわからないだろ。けど、ひとつだけ。
「おみくじも引いたし、甘酒も飲んだし、あとは……綿飴買う? 階段下りたとこで売ってた」
ふと、白崎の周りに忙しなく広がる吐息の白と、頬のピンクがさ、連想させたんだ。
「え?」
「ほら、なんか、今、人気じゃん。カラフルな」
「知らない。そうなの?」
「いや、俺もよくは知らない。綿飴とか、そんなでもないし」
「佐伯君も知らないんじゃん」
笑った。クスって、笑った。けど、眉を下げて、なんか困ったような変な笑い顔。
ひとつだけわかったことがある。大人びてなんかなかった。あと、けっこうよくしゃべる奴。そんで、笑い方が下手くそで面白い。だから、なんか笑わせたいなぁって思った。そんな転校生だった。
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