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「日向のこと好きってもっと言って大丈夫ってわかったし」
「!」
「我慢、してるってわかった」
「っ!」
「だから、もーっと日向をワガママにしちゃっていいって確認もできた」
「ちょっ!」
ようやくしっかり見ることのできた君の頬がピンク色で綺麗だった。まるで、海の中にいる貝みたいに。
「今度、日向が何も言わずに我慢してたら」
「……」
手に持っていたカツラを指でクルッと回して、自分の頭に乗っけると、もう街灯を通りすぎてまた見えにくくなってしまったけれど、それでもわかるほど目を丸くしてる。
「俺が女の子のフリとかして聞きだそうかな」
「っぷ、ちょ、ちっとも似合わない」
「うん。けど、日向が笑ってくれた」
「伊、……」
君が笑ってくれるなら、なんでもできるし、なんでもするよ。だから、黙って我慢なんてしないで欲しい。俺にだけは強くなんてなくていいよ。君を守れるカッコいい男になってみせるから。そして、そんな俺にご褒美の。
「ン……」
キスをひとつくれたら、とても最高だから。
「伊都」
横から覗き込むように、首を傾げて君にキスをした。その拍子に頭に乗っけたカツラがズレて、君が笑って、笑った口元にキスをしたら鼻がぶつかって。なんだか楽しかった。キスをするのが面白いなんて、初めてで、また一つ、増えたって思ったんだ。
君とした、「初めてのこと」が。
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