5355人が本棚に入れています
本棚に追加
白いワンピースはけっこう目立つけど、脱がなくて大丈夫? って訊いたんだ。中にハーフパンツだけど履いてる、タンクトップも着てるって言ってたから。でも、なぜかそのままでいいと、旅館の部屋までそれを着ていた。もう夜で、呼べば誰かしら出て来てくれるだろうけれど、そっと静かに通ってしまえば、フロントには誰もいなかったからよかったけど。
玲緒なら、面白がってずっと着てる。けど、日向なら恥ずかしいとすぐにでも脱ぎそうなのに。
「あ、あの、伊都」
「うん」
部屋に入って、改めて、その姿を見ると違和感があんまりなくて、やっぱり心配になる。もう少しくらい違和感あってくれないと、本当、困るから。
「これ、脱いじゃっていいの?」
言いながら、きゅっと、その白いワンピースの裾を握り締めてる。
「え? なんで?」
「俺なんかじゃ、あれかもだけどっ、でもっ、伊都、よく言うじゃん。可愛いって……その、俺のこと……お、俺はちっとも思わないけどさ」
声が大きくなったり、小さくなったり、と思ったらまた大きくなって。白いワンピースを着た自分をもてあますように手で、その布をぎゅっと握ってる。
「その、だから」
「もしかして、可愛いって、俺がゲイじゃなくて、恋愛対象が女の子だから、日向にもそれを願ってる、とか、思ってる?」
「……」
真っ赤になって俯いてしまった。そして、戸惑って、考えて、けど、何も言わず我慢するようなことはもうしないでいいと話したから、小さく頷いて答えてくれる。
「日向ってさ」
「……う、ん」
「たまぁ……に、馬鹿だよね」
「!」
溜め息を一つ吐いて、真っ白なそのワンピースを頭からズボッと引っこ抜いた。
「日向が可愛いんだよ」
そんな不安そうに覗き込まないで。切なげに見つめないで。
「可愛い子が好きなんじゃなくて」
じゃないと、理性とか溶けて消えちゃうってば。
「好きな日向が、ただ、フツーに、可愛いだけだよ」
でも、もう、我慢とか、理性とか、そういうの溶けて消えかかってるけどさ。
最初のコメントを投稿しよう!