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「ん、ひゃぁ……ぁっ」
白い肌はすぐに痕がつくから、首筋にちょっとだけキスをした。甘い声にゾクゾクする。ふたりっきりの旅行、ふたりっきりの部屋、ふたりっきりの夜。我慢したくない。今夜は、日向のこと――。
「あ、伊都! 伊都っ! だ、ダメっ」
「…………」
日向との、夜を、我慢したくない。
「ダメえええええ!」
「…………」
「ダメ!」
抱き締めて、首筋にキスを一つしたら、背中を反らしてまで、口元を両手で押さえつけられた。
「……」
「ダメ!」
思いっきり怪訝な顔での抗議をしても口元の手はどかしてもらえなくて。逆に強い口調で拒否されてしまう。そんな「ダメ」を連呼されるとは思ってなくて、けど、君のほっぺたが真っ赤だったから、口元を押さえる両手が優しかったから、強引なことはしなかった。
「ま、待って……あの」
君がいいよって言ってくれるまでくらい、いくらだって待てるよ。だって、好き同士なのはわかってるから。
「あの」
うん。なぁに?
「あの、お風呂入って来ようよ」
今?
「その! 汗臭いからっ、えっとっ、だからっ」
でも、汗臭くないよ? さっき入ったし、なんだったら、後でまた入るでしょ? 一日でそう何度もお風呂に入ったら、茹でダコになっちゃうよ。日向は白いから真っ赤になってのぼせそうだ。
「あ、あのねっ」
もうすでに真っ赤な君が何かまだ言いたそうだった。
「あのっ……」
だから、少し待っていた。もしも、俺がトモさんと一緒にいたことが何かわだかまりになっているのなら、もしも、俺が同性愛者じゃないことがまだ引っかかるのなら、どうしてもどこかトゲトゲした気持ちになってしまうのなら、柔らかくなるまでいくらだって待つし、告白し続ける。
君のことが好きだって。
「あの、伊都」
「……うん」
両手を押さえつけていた手から解放された。そして、その手が俺のTシャツをぎゅっと握って、日向がうなじまで真っ赤にしながら、胸に顔を埋めて隠れてしまう。
「日向?」
「……あ、の……」
なんだろう、君の今、どうしても言いたいことって。
「うん」
「あの、さっき、ワガママ言ってもいいって、嬉しいよって、言ってくれた、でしょ?」
「うん」
「ほ、本当に言っちゃってもいい?」
「うん」
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