1 カウントダウン

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「……ウワサだろ?」  真っ白なコートに真っ白な肌をしてて、ここじゃひどく寒そうに見える、隣の教室の、転校生。その転校生が肩を竦めながら、もう初詣が終わったのか通り過ぎていった。 「えーでも、なんかミステリアスだよね」 「……」  振り返ると、皆とは逆方向に、ひとりぼっちで、それこそ、実在していないような、真っ白な、架空の生き物のようだった。 「あああ! っていうか、もうカウントダウン始まっちゃう!」 「今年、混んでるな」 「もおお! 伊都は呑気だなぁ」 「いいじゃん。別に。カラオケまではまだ時間あるんだし。ほら、じゅう、きゅう」  ちょっと、って玲緒が隣で慌ててた。でも、カウントは進んでいく。  時間は待ってくれないし、ただ過ぎていくだけで、カウントダウンしたってしなくたって、年は変わるし、年が変わるだけの話だし。区切りなんて。 「行列の中でとかっ!」 「よーん、さーん」  に……いち。 「あー、もうとりあえず!」 「あはは。明けました。おめでとう」  ふと、振り返った。なんでかわからないけど、あの転校生はひとりでカウントダウンしたのかなって、思いながら振り返った。 「明けましておめでとう! 伊都っ、ライン、みんなにできるかな」  転校生は白い息を吐きながら、ちょっとだけ空を見上げていた。白くて、キラキラしているように見えるほど、真っ白で。 「どうだろ。……おめで、と、う、って送れ、そう?」  ひとりだった。  そして、新しい年が、始まっていた。
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