白と黒

10/12
前へ
/12ページ
次へ
初めて二人で休みを迎えた日に、白を連れて日用品の買い出しに出かけた。白が自分に買ったものは本当に最低限度のものだけで、他には何も買っていなかった。無理言って泊めてもらっていることを申し訳なく思っているようで、こちらが困るくらいに遠慮をしている。 僕はもう一式布団などを揃えた後に何か欲しいものがないかと聞いたが、何もいらないの一点張り。結局それ以上は白が譲らずに何も買わずに終わった。それでも何も時間を潰すものがないのは申し訳ないと思い、近場の図書館へと向かった。 無料で借りられるものなら罪悪感も芽生えないだろうと思い、そこで好きな本を借りてよいと言った。それでようやく自分の読みたい本を選び出した。白的にはこれが何よりも嬉しいようで、楽しそうに本を選んでいた。本を読むのが好きだと言うことがこれで分かった。 それからは毎週土曜日に、二人で図書館に出かけ本を一週間分借りるという習慣ができた。白は家には帰るとすぐに日向で本を読んだ。そして眠くなったらそこで丸くなって眠った。その様子は猫そのものだった。なんだかその姿が面白くて、僕はよくその様子は写真に収めた。 それを白に見せると、勝手に撮らないでと膨れていた。初めの頃は僕に遠慮していたが、時間の経過と共にそれもなくなってきた。冗談を言ったり、笑ったりする頻度が増えてきた。僕としては最初のように遠慮されるよりは、こうして冗談を言いあえる方が気が楽である。 それでも白は何かを買って欲しいとだけは言ってこなかった。何度聞いてもこれだけ良くしてもらっているから、もう何も望まないの一点張りだった。 そんな白が一度だけ物を欲しそうにしたことがあった。12月になり本格的に冬が訪れた頃、僕と白はあてもなく家電量販店をうろついていた。 しばらくぼんやりと歩いていたが、気づいたら白がいなくなっていた。元の道を戻っていくと白が、こたつのコーナーでじっとこたつを見ている。僕がこたつがほしいのかと聞くがいらないと返答する。正直言ってそれが本心でないことは容易に分かった。 白がこうして物を欲しがる様子が珍しくて、ついこたつを購入してしまった。白は心底申し訳なさそうにしていたが、僕も欲しかったと適当に誤魔化して購入に踏み切った。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加