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こたつが届いてからは白はほとんどこたつの中にいた。何が彼女を焚き立てるか分からないが、ずっとこたつに入って読書をしていた。その姿を見てやっぱり猫みたいと言うとまた拗ねてしまった。
こたつは一番小さいものを買ったので、二人で入るとかなり狭い。少し動くだけで互いの足を踏みつけてしまい、よく子供じみた喧嘩が起こった。もちろん本気で怒っているわけではないが。
こうして二人でたわいのない話をすることが僕は好きになっていた。今までは一人でいることの方がよいと思っていたが、白と出会ってからは人といることの魅力に気づけるようになった。僕は白との生活を通して人並みの生き方を学ぶことができたのだと思う。
ずっとこれからも白とこういった日常が続くのだと、気づけば考えるようになっていた。事情は今も分からないが、いつか話してくれるだろうと呑気に考えていた。
しかし白との別れも唐突にやってきた。
僕は仕事があるので家からこっそり出ようとしたら、白が起きてきて僕の見送りをしてくれた。いつもなら絶対に起きないのだが、今日はたまたま目が覚めたのだとか。今日は雪が降るなと白をからかうと、雪が降るなら毎日早起きするよとはにかんだ。
そのやりとりが白と最後に交わした会話になった。いつもと同じ時間に家に戻ると、家には誰もいなかった。白が使っている日用品も全てなくなっていた。まるで白の存在そのものがなくなってしまったようだった。
机の上には「今までありがとうございました」という短い書き置きが置いてあった。
結局、最後まで白のことはよく分からないままだった。事情だけでなく、本名すら知らない。だけど、身元の一切分からない少女は僕の中でかなり大きな存在になっていた。
白のいなくなったこたつに一人で入る。一人で入るこたつは想像以上に広く感じた。広さを感じると同時に強い孤独感が襲ってくる。今まではこんな風に孤独を感じることはなかった。白とのいることが当たり前になったことにより、一人でいるときの過ごし方が分からなくなっていた。
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