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足から込み上げて来る熱気に当てられて、眠りから引きずり起こされる。目を覚ましてすぐ目の前に広がるのは、誰もいない閑散とした部屋。
最近は気にならなくなった部屋の広さだが、今日は何故だか異様に寂しく感じる。さっきまで見ていた夢がそう感じさせてしまうのかもしれない。
それは夢というよりは過去の回想に近いものだった。冬の訪れともに転がり込んできた身元不詳の女の子は、僕の中に暖かい思い出と、それを失った喪失感を与えていた。
その少女との出会いは唐突に訪れた。いつも通り仕事が終わり家に向かう途中、家のすぐ近くでその子を見かけたのが初対面であった。
もうじき冬がやって来るという11月に、よれているパーカーにジーパンといった容姿に無頓着な格好で1人電柱に寄りかかっていた。季節にそぐわない格好をしているせいか、寒そうに体を震わせている。他には何も持っておらず、ただ体を震わせてながら無表情に目の前を見つめ続けている。
こんな遅い時間に一人でいる少女は明らかに不自然であったし、少しは気になりもした。しかしそれ以上に疲れが上回り、そのまま少女の横を通り過ぎることにした。ラフな格好だし荷物の受け渡しとかだろう。
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