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そのまま遠慮がちに部屋から出て行く。それから少ししてシャワーの音が聞こえてくる。自分以外の人間がこの部屋でシャワーを浴びていることに強い違和感を覚える。
少女がシャワーを浴びている間に部屋の片付けを行う。少女は気にしなそうだが、片付けないことには僕が寝るところが確保できない。さすがにあれだけあどけない少女に床に寝なさいとは言えないし、ましてや一緒に寝ようなどもっと言えない。
しばらくしてから少女がシャワーから出てくる。髪を濡らしている少女はなんだか、さっき以上に弱々しく感じるだけでなく無防備のようにも思えた。
「あのさ1つだけ聞きたいことがあるんだけどさ、君名前はなんて言うの。それも聞いちゃまずいかな?」
少女が再び無言になる。どうやらこれも答えられないらしい。とは言えこれからしばらくは一緒にいるのだし、なにか呼び名でもないと色々と不都合がでそうだ。
「うーん、それも無理か。それならせめてなんて呼べばいいか教えてもらってもいいかな」
「……それじゃあ白って呼んでもらってもいいですか。私雪とか白いのが好きなので」
「分かった。じゃあこれからよろしくね、白。あ、じゃあ僕のことは黒って呼んでよ。君が偽名を使うなら僕も偽名の方が面白いでしょ」
白がまだ緊張しているようなので、おどけた口調で提案する。冗談のつもりで言ったが、これが思ったよりうけたらしく白は控えめに笑っている。彼女が笑っている顔を始めて見た。
「はい、よろしくお願いします黒さん」
すぐに本名を言う予定だったが、白もその気になっているので結局は黒で通すことにした。別に本名だろうと偽名だろうと大した問題はないだろう。
「じゃあ僕はもう寝るからベットは白が使っていいよ」
「いえ、これ以上は申し訳ないのでベットは黒さんが使ってください。私は床で寝ますので」
「この部屋の家主は僕だから、どうするかの決定権は僕にあるよ。だから床で寝るのは僕だよ」
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