白と黒

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そんなやりとりがしばらく続いたが、最終的には白が先に折れた。謝罪と感謝をしながら布団に潜って行った。初めは緊張して寝れないのでは思ったが、すぐに可愛らしい寝息が聞こえてくる。おそらく相当疲れていたのだろう。 こうして僕と白との奇妙な同居生活が始まった。 次の日、朝早く起きた時白はまだ寝息を立てていた。白の寝顔を変な感情を抱きながら眺め、それから昨日話したことを書き置きに残して部屋から出て行った。 正直なところ、今日は仕事にまったく集中できなかった。どうしても白のことが気になって、仕事は早めに切り上げて家に戻る。その最中に思ったことは、白がそのまま行方をくらませていることだ。か弱い印象を与えて部屋に入って、金品などを盗む新手の強盗ではないかという考えが思い浮かぶ。 なんだか事件とかそういったことを考えるよりはるかに現実的なことのように思えた。しかし仮にそうだとしても、なんだか今は笑って流せるような気がする。そもそもこちらも無用心に知らない子に鍵を渡したのだし落ち度もある。 しかし僕のそんなネガティブな想像を裏切るように、白は礼儀正しく僕の帰宅を待っていた。テレビも何もつけずにちょこんと座り込んでいた。どうやら不要な電気代がかかることを心配しているのか、ほとんど電気などを使用していないようだ。 そこまで気を使われてしまうと僕の方が申し訳なくなってしまう。もっと自由に色々としてよいと根強く言い続けると、申し訳なさそうにテレビをつけた。 それからは特に何かするわけでなく、それぞれがやりたいことを勝手に行った。僕は携帯で調べ物をして、白はぼんやりとテレビを眺めていた。おそらくテレビをつけても見たいものがないのだろう。明日は休みだし、もう少し白の好きそうなものを買いに行こう。 こうして僕と白との生活は、特に大きな出来事を迎えることなく平穏に過ぎていった。なにかしら大きな出来事が起こるだろうと覚悟していたが、それは取り越し苦労に終わりそうだ。
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