第1章

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7コイバナめ 「本気?もしかして酔ってる?寝言?」 彼に笑顔でこんな言葉を正面から言われるとは。 酔ってない。 寝てないから寝言じゃない。 緊張して夕べ寝られなかったから事実寝てない。 てかマジか。 めっちゃ頑張って告ったのに。 ベストでジャストなタイミングを狙いに狙って告ったのに。 「あれ?聞いてる?」 YESとかNOとかの返事でさえないって。 めっちゃダメージ。 ダメージonダメージ。 あ、これ明日は仕事休みますとか言いたいやつ。 好きな相手に好かれてると思ったら大いなる勘違いとか、恥ずかしすぎてもう転職したいレベル。 そうだ転職しよう! 「おーい。もう1回言って」 明日もし退職願いを出しても引き継ぎとか1ヶ月は出勤しなくちゃならないだろうから、その間は耐えないといけないなあ。 あー辛い。 好きなのに顔を見るのも辛くなるなんてなあ。 転職先ってどうやって探すんだろ。 「ねえ」 肩を軽く叩かれて我に返った。 現実に戻さないで欲しかったなあ。 でも好きだなあ。 いや、好きだったなあ、に変えないとな。 「えーっと、ごめんね?」 「…謝られる意味が分かんないんだけど」 「あーえーっと迷惑だったよね」 「そんなこと言ってないけど」 不愉快そうな顔してる。 さっきまでの笑顔はどこいった。 爽やかに見せかけてはいるものの腹黒さが隠れた性格の悪そうな笑顔、好きだったなあ。 「もう1回言って」 「…何を?」 「さっきの言葉」 ドSかよ。 それでも自棄気味に言おうとしてる私はドMかよ。 「好きです。付き合ってください」 定型文のお手本のような告白。 2度目でも恥ずかしい。 恥ずかしすぎる消えたい。 「本気?」 「本気じゃなかったら告らないと思う」 「そうだよな。じゃ付き合おう」 「は?本気?飲んでる?起きてる?」 「本気だし飲んでないし起きてる」 「いや色々大丈夫かと思って」 「それが好きな相手に言う言葉かよ」 「え?私のこと好きなの?」 「OKした相手に言う言葉かよ」 あれ?これは転職しなくていいし、好きだった、にしなくていいやつ? マジで? 「帰って寝て起きたら現実かどうか分かるよね。よし帰って寝よう」 「いや今がリアルだから」 「いや夢かもしれないから」 「うんじゃあまず現実を再確認するとこからな」 手を取られてそのまま指を絡められ、さらにそのまま引かれて歩きだした。 目を開けたまま夢を見てるような… 「ようこそ現実へ。オレは彼女を名前で呼びたい派なんで」 そうかそれは新情報だ。 どこにでもいる平凡な名前だけど、彼に呼ばれると思うとすごく特別な名前に感じるなあ。 そうかそうか。 こんな夢みたいなのに現実なんだ。 「あ、言い忘れてたけどオレも好きだよ」 サラッと言われた告白に心臓止まりそう。 今日を私のなかで告白記念日として祝日に制定します! end.
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