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「先輩!待ってください!!」
呼び止めた私の声が、人の少ない夜の道でやけに響いた。
バイト先のお店から私の前を歩いていた先輩が、私の声で私に気付いて足を止めてくれた。
緊張して痛いくらいの心臓が、先輩の不思議そうな表情が、私の足をすくませる。
先輩の吐く息が白い。
鼻の頭が少し赤い。
スラッと背が高くて、バイト先でイケメン担当と呼ばれるくらいイケメン。
おまけに頭がよくて、私の成績なんて鼻で笑われるレベル。
でも嫌みのない優しい人だ。
「どした?」
緊張して黙ったままの私にもこうやって声をかけてくれる。
さあ頑張れ私!
「先輩、大好きです!!」
よし言った!
無駄に声を張ったけど、言えた!!
先輩は目を丸くして私を見ている。
それから困ったように微笑んで
「うん。ありがとう」
お礼を言われてしまった。
「でさ」
先輩の言葉が続く。
「そんな離れてじゃなく近くで言ってくれない?」
「無理です」
「拒否早くない?」
苦笑した先輩が近づいてきて私の前で止まった。
スッと手が伸びてきて私のおでこをペシンと痛くないように叩く。
「ねえ」
「はい」
「付き合ってる彼女が好きだって言ってくれるのは嬉しいけど、なんでそんなに緊張される上に月イチの恒例行事なの」
「軽くは言えないくらい好きだからです。でも言いたくなるからです」
月イチで溢れる私の気持ちを先輩が受け止めてくれるのも好きだから、なんて言えないけど。
「そっか。ありがとう」
そっと私の手をとって、
「どんだけ緊張してたの。手が冷たすぎ」
そのまま繋いで先輩のコートのポケットに先輩の手ごと入れてくれる。
本当に大好きなんです。
全部全部ひとりじめしたいと思うくらい大好きなんです。
「温かい飲み物でも買うか」
「…」
「ココアあるといいけど」
私の好きなものをさりげなく探してくれる時や私と話をする時は私のことを考えてくれる時間。
こうやって月イチで先輩の頭の中にいる私を増やしてやろうという、私の企みです。
また来月も好きだって言います。
先輩が大好きだから。
end.
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