第1章

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4コイバナめ① 「何人で来てるんですかー?」 「3人だよ」 「友達と??」 「彼女と友達って言ったらどうなんの?」 冗談めいた男の言葉に笑い声が起こる。 少し離れたところでの会話が聞こえて足を止めた。 ビキニの水着女子3人に話しかけられているのは男1人。 女の子は日差しを背に話しかけてるのに、男だけパラソルの作った日陰にいる。 パラソルは海の家のレンタル品だ。 華やかな色柄の水着女子に比べ、男はどことなく普段着感のあるパーカーを羽織っている。 ただ、顔だけは恐ろしいほど格好いい。 あまりにも明確にイケメン。 確かにこんな顔の男がいたら、テンションは上がるだろう。 「よかったら一緒に遊びませんか?」 「え?なんで?」 可愛いビキニの子の誘いに笑って言葉を返した。 「なんでって一緒に遊んだら楽しいかなって」 「え?なんで?」 同じ言葉を返されて、女の子が怯んだように言葉に詰まった。 男の雰囲気がいつの間にか少し怖い感じに変わっている。 顔は笑顔のままで。 「俺、彼女と来たってさっき言ったよね?なんでそっちと遊ばなきゃならないの」 「え、ウソ!でも冗談ぽかったし」 「ほんとに彼女とだから。悪いけど他を当たってくれる?」 それだけ言うと、パーカーのフードをすっぽりかぶって水着女子を完全に無視し始めた男に女の子たちが文句を言いながら離れていく。 人混みの中に女の子たちが紛れて見えなくなるのを待って、止まっていた足を動かした。 「ムカつく」 男の前でそう言うと、にっこり笑って 「見てたの?」 とだけ返された。 本当にムカつく。 「彼女って誰よ?嘘つき」 「オレ、嘘は言ってなくない?恋人って彼女でよくない?」 「くそ嘘つき詐欺師」 顔がいい分だけ憎たらしくて睨んだ。 顔がいい奴にみんな騙されがちだと思う。 「またケンカしてんの?」 言い合いをしていたら、もう1つ低い声が割り込んできた。 声に似合ったいかつさが特徴の体と顔の持ち主だ。 「だってあいつが!」 フードを被ったあいつを指さして訴えると、 「いじめるなよ」 彼は私の味方をしてフードのあいつの隣に座る。 私は彼の隣に座ってフードのあいつと距離を開けた。
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