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5月 朝 教室
「奏人おかえりー。 また女子からの告白ー?」
久我奏人(クガカナト)。 この春から、高校1年生になった。 奏人は細身で身長は高く、髪色は濃い茶髪。
お洒落にも気を遣っていて、両手首にはいくつかのブレスレットが制服の袖から覗いており、首には黒いチョーカーが襟元から申し訳ない程度に覗いている。
勉強もできスポーツもできるのだが、自分はいたって一般の者だと思っていた。 それなのに何故か、異性にモテる。
「あぁ、そうだよ」
「相変わらずモテるなぁ。 一度、彼女作ってみればいいのに」
「嫌だよ。 別に興味ない」
「どうして彼女作らないの?」
「その理由、伊織が一番知っているくせに」
成瀬伊織(ナルセイオリ)。 細身で身長も高い方なのだが、奏人と比べると少し低め。 そして髪色は明るい茶髪。
静かな奏人とは反対で性格はとても明るく、お調子者でもありムードメーカーでもある。 そんな彼に引っ張られながらも、楽しい毎日を過ごしていた。
それに彼とは小さい頃からずっと一緒にいて、幼馴染でもある。 高校も同じところに通うことができ、クラスも一緒になることができた。
この高校へ入学して一ヶ月が経つが、伊織が傍にいてくれるおかげか不安もなく、安定した日常を送ることができている。
「奏人はモテるのに、何か勿体ないなぁ」
高校に入ってから約一ヶ月、既に30人の女子からは告白を受けていた。
まだ出会って間もないため、好きになった理由は内面を見てではなく一目惚れから入ったということは分かっている。
それに関しては何も思っていないのだが、奏人は今まで異性の内面を見ても容姿を見ても、人を好きになったことがない。
まるで“恋愛感情”というものだけが、心の中に最初から備わっていなかったかのように、異性を見ても何も思うことができなかった。
だから振られて泣いてしまう女子には悪いが、人を好きになれている時点で羨ましくも思う。
奏人は――――今まで恋愛をしたことがなく、ましてや人を好きになったこともない珍しい少年だったのだ。
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