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そこから現れた瑚幸に、奏人は溜め息交じりで小さく呟く。
「だから、部屋へ入る時はノックをしろって何度も言っているだろ」
「あぁ、ごめんごめん。 つい癖で。 でも元気そうだね?」
柔らかな表情を浮かべる姉に、奏人も優しい表情を見せた。
「俺はもう大丈夫だよ。 心配かけたなら悪いな」
すると瑚幸の後ろからは、保健の先生が続けて入ってきた。 その姿を見るなり態勢を改め、奏人は先生に礼を言う。
「先生! あの、先程はずっと俺に付いていてくれて、ありがとうございました」
「いいのよ。 無事みたいで、本当によかったわ。 あと病院の先生が言っていたけど、奏人くんは他に異常はないみたいだから、今日はこのまま家に帰ってもいいって」
「分かりました」
「じゃあ私、奏人くんのことを報告するために学校へ戻るわね。 もう大丈夫だと思ったら、ゆっくりと家に帰って安静にしててね」
「はい」
そして先生は先に、この病室を後にした。 そんな先生の言葉を聞いていた瑚幸は、より安心したのかリラックスした状態で大きく伸びをする。
「あー! 本当によかった! 奏人が平気なら、あとは伊織くんに任せて私ももう帰ろうかな。 ねぇ奏人、今日の夜は何食べたい? このままスーパーへ寄っていくよ」
「何でもいいよ。 つか、急に優しくされると違和感しかないから止めろって」
「つれないなぁ。 私はいつでも優しいって!」
そう言いながら楽しそうに病室のドアの方まで歩くと、急に振り返り伊織に向かって口を開いた。
「そうだ! 伊織くんも、よかったら今日ウチでご飯を食べてって」
「え? あ、いや、それは」
「じゃあ、待ってるからねー」
笑顔で手を振りながら伊織の返事も聞かずに、去っていく瑚幸。 そんな自由な彼女を見て戸惑っていると、奏人が苦笑して言葉を発してきた。
「伊織は明日予定があるから、流石に今日は家に来れないよな」
「あー・・・。 そのことなんだけど」
「?」
ここで伊織は言いにくそうに、事情を話していく。
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