恋の大作戦。

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「奏人が今の調子じゃ心配だから、明日の蓬莱さんとの約束断ろうと思って」 「はぁ? いや、折角誘ってOKもらったのに、今更何を言ってんだよ」 「だから、奏人のことが心配で楽しめるもんも楽しめないって!」 「俺のことは気にせず行ってこいよ。 ・・・それに俺、明日は予定が入っているし」 「え・・・。 そうなのか?」 その言葉に奏人は小さく頷くと、伊織は心配そうに尋ねた。 「・・・それは外せない用事なのか」 「用事ってか、まぁ・・・。 今更断れない、かな」 「・・・そっか。 じゃあ俺が蓬莱さんとの約束を断っても、奏人が家にいないんじゃ意味ないか」 「あぁ。 だから、俺のことは気にせず明日は蓬莱さんと会って、楽しんでこいよ」 「・・・分かったよ」 仕方なく奏人の言うことを素直に聞くと、彼は身体の向きを変えてくる。 「よし。 じゃあ俺たちも、そろそろ帰ろうか」 「もう平気なのか?」 「あぁ。 ここにいても暇だからな。 で、もし伊織に余裕があるなら今日の夜は俺ん家へ来い。 瑚幸も、待っているからさ」 「・・・あぁ」 優しく笑ってそう返すと、奏人は外靴を履きベッドの横に置いてあるスクールバッグを手に取った。 そして立ち上がりながら、伊織に向かって口を開く。 「じゃあ俺受付へ行って済ましてくるから、伊織は病院の入り口らへんで待ってて」 「分かった」 そう言って先に奏人が退室すると、伊織はポケットから携帯を取り出し時刻を確認した。  今は15時で、丁度学校が終わったのだろうか今日連絡先を交換したばかりの美桜から、一通のメールが届いていた。 内容は当然奏人のことで、彼女も心配してくれているらしい。 そして明日の件についてどうするのかも、文章に載っていた。 そんなメールに何て返そうかと考えながら、一度携帯をしまい病院の入口へと歩いていく。 ―――・・・そういや奏人のヤツ、倒れた時の記憶ないのかな。 ―――自分が狙われているかもしれないっていうこと、気付いていないみたいだし。 ―――・・・まぁ、今はいいか。 ―――奏人が今を、楽しんでくれているならさ。
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