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「あー、また良いところで・・・」
これ以上スクロールされない画面に肩をすくめ、椅子の背もたれに身を預ける。
カチカチと空しく鳴るだけのマウスが、現実に戻り切れない未練を伝えてる。
諦めて閉じた瞼の奥に浮かび上がるのは、今しがた刹那のやり取りを繰り広げていた男女の影。
本当の自分を隠し強がる彼女の前には、傷だらけの身体であるにも関わらず強く澄んだ瞳の男性が佇んでいる―――
全裸で。
そのシーンが忠実にクローズアップされる寸前で脳内の停止ボタンを押し、ついでにパソコンの画面も閉じる。
入れ替えのようにスマホを手に取り、きっと私と同じ悶絶を感じているだろう人物にメッセージを送った。
アンダーハートの大人気連載である『女王様のペディキュアは僕の舌』
以前作者である西奴さんに直接感想を告げたところ、とても喜んでくれたらしく新作分を入稿前に横流ししてもらえた。
クライマックスに差しかかり始めたというだけあって、今回も非常にドキドキする展開だった。
ただの女王と犬という立場でしかなかった2人が、お互いの心に潜む真実の愛に気づき始めた。
けれど気位の高い女王は、犬であるはずの主人公に魅入られる自分が許せず、わざと傲慢にふるまってしまう。
主人公の方もそんな女王の弱い部分に気づき、内面ごと愛したいのに届かない。
成人向けのSM小説なのに妙にハマっちゃうのは、こうして織り交ぜられた恋愛模様のためだろうな。
データを頂けたのが休みの前の日で本当に良かった。
おかげで、第1話から通しでじっくり読み返すことができ、より深く物語に入り込める。
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