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ドM達の熱い談義には参加できないものの、取材をさせてもらいたい気持ちには勝てず急いで支度をして梶浦さんの元へと向かう。
待ち合わせ場所に指定されたのは、私と西奴さんが劇的な出会いをしたあのコンビニだった。
そういえば、あの日以来西奴さんとはお会いしてなかったな。
ケーキを譲ってくれた人の良い好青年が、実はSM作家だと知った驚きは今でも忘れられない。
でも最後の最後で『ですよね』とすべて納得できるほど破壊力の高い部屋を覗いてしまい、目も合わせず帰ってしまったんだっけ。
衝撃的過ぎたとはいえ、雑誌を支える偉大な方に対してなんて失礼な行動だったんだと今更後悔が浮かぶ。
もちろん本気で拒絶したわけではないし、その後に体験した強烈な店舗潜入のおかげで、あの空間も可愛いものに感じるんだけど。
とにかく、今日は取材も兼ねてるんだし何を見せられても受け入れよう。
目を見張るような道具があったとしても、そこから素晴らしい物語のインスピレーションが生まれてると考えれば国宝と同等だ。
梶浦さんもいるんだし、仮に私が後れを取っても上手くフォローをしてくれるはず。
・・・いや、相乗効果という言葉もあるな。
ドMの結託力は強そう。
2人して求める側に回られたらどうしよう。
そんな不安は多少あったけど、今までこなしてきた未知の取材と違い私の心は大分落ち着いていた。
相手は、平常であればとても気遣いに溢れた優しい大人たちだ。
眼鏡にチャラ男というあの筆舌に尽くしがたいダメンズとは雲泥の差だし、ペアの相手も取材先もひとまず信頼できる。
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