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そんなことを考えながらコンビニに入ると、雑誌を読んでいた梶浦さんが顔をあげニコニコと手を振ってくる。
「あー小雪ちゃん。こっちこっち」
何の裏も見えることなく、勘繰りも必要ない純粋な瞳に私も安心して駆け寄った。
「ごめんなさい、結構お待たせしちゃいましたよね」
雑誌を戻す腕には、既にいくつもの商品が入ったカゴがかかっている。
私が来るまで会計しないでいてくれたんだと気づくと、梶浦さんは「全然だよー」と笑い飲料コーナーに歩いて行った。
「小雪ちゃんも飲み物選びなよ」
「すみません。お邪魔させてもらうんですし私も半分出しますね」
「良いよいいよ!コンビニで細かく払わせるなんて、みみっちい男じゃん」
あはは、と本当に優しく笑うので、ついつい頷いてしまう。
こうやってさり気なく甘えられるのが梶浦さんの良いところだ。
今日も存分にそのスキルが発揮されてるなとしみじみしていると、梶浦さんはペットボトルの並びを越え、アルコール類の前で立ち止まった。
えっ、梶浦さん飲む気でいるの?昼間から?
まあ観賞会に勤しむなら夜までかかるかもしれないけど・・・
とりあえず後をついて行くものの、一歩下がって様子を窺う。
可愛らしく小首を傾げ、ビールの間を行ったり来たりする丸っこい瞳。
しかし許容量を超えるアルコールを取り入れたら最後、この微笑ましい眼差しは一変し傍若無人に暴れまわるトリケラトプスとなるのだ。
一応草食動物のはずなのに・・・とあの豹変ぶりを思い返しながら見守っていると、梶浦さんがくるっとこちらを向いた。
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