ブラックオフィスレディ 【R-18】  ep.10-1

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「ビール5本で足りる?遠慮しなくて良いからね」 どうやら酒乱扱いされてたのは私の方だったらしい。 「あ、でも大吟醸は勘弁して・・・」と小声で付け足され、彼の中であの日の記憶がどう確立されてるのか不安になる。 どっかの眼鏡が、余計なことだけ吹き込んでそう。 「えーと・・・コーヒーで良いです」 「ホント?我慢しなくても」 「手とか震えないんで大丈夫です。それに取材も兼ねてますし、アルコールはちょっと。梶浦さんこそどうぞ・・・」 遠慮なく飲んで下さい、私が立ち去った後に。 そう言外に込めながら、いつも飲んでいるコーヒーを取り出してカゴに入れさせてもらう。 すると梶浦さんも軽く首を振り、お茶が並ぶ扉の前に移動した。 「俺もお茶にする。酔っちゃったらちゃんと観れないからねえ」 確かに、覚醒モードの彼じゃM男動画は腹の足しにもならないだろうな。 ものすごく説得力のある言葉に心から頷きたかったけど、別に梶浦さんは自分の裏の顔を知ってて言ってるわけではない。 「記憶なくなっちゃうと観た気がしませんもんね」 「あはは・・・いつでも初めて観るように楽しめるじゃん、って今次くんには言われたけど」 年がら年中花畑の人は言うことが違う。 きっと人生さぞかし楽しいんだろうなあ。 もはや羨む気持ちすら抱くと、梶浦さんが「あっ、これ気になる」と小さく呟き、新発売と書かれた玄米茶を手にした。 なんて素敵なチョイスだろう、こっちまでのほほんとした気分になりながらレジに向かう。
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