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やれやれ、ようやくか。
彼女の買い物だってこんなに付き合わねぇよ、と思うほど時間がかかった。
ゆっくりレジに向かうと、ユウタがなにやら慌てている。
「どうした?」
「駿にぃ……」
泣きそうな顔したユウタの手元には500円玉。
レジには500円プラス消費税。
ま、小学生にはありがちだな。
俺はふっと笑ってポケットからポチ袋を差し出す。
それを見てユウタは首を横にふった。
「僕、自分のお年玉で買いたいんだ」
心意気は立派だ。
だが、ひとつ勘違いしている。
これは俺が誰かから貰ったお年玉じゃない。
「ばぁか。これは、俺からお前にあげるお年玉だよ」
俺たち家系はバイトを始めた高校生は、下の奴らにお年玉をあげるんだからな。
帰ったら配ろうと思っていたけど、ユウタだけフライングしてもいいだろう。
ユウタはほっとして、それから嬉しそうにお礼をいってから、受け取ってお金を支払った。
がさつなタク兄の子どもとは思えないしつけのよさは、奥さんのおかげだろうななどと失礼なことを考えているうちにユウタが戻ってきた。
手にはしっかりと可愛い袋が握られている。
その反対の手が、俺の右手を握った。
「はやくかえろう」
「そうだな」
暖かい手を握り返し、俺たちはお兄ちゃん気分に浸りながら家路を急いだ。
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