お兄ちゃんのお年玉

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可愛かったユウタは今、隣で小さいぬいぐるみを両手にひとつずつ持って唸っている。 あの頃の俺と同じ年になったユウタは、俺と同じように妹にお年玉を買うらしい。 「懐かしいな。俺も昔おもちゃ買ったよ」 「知ってるよ!」 そう言うと、ユウタはこちらをチラリと見てまた手元に目線を戻した。 「まだ家にあるよ。ママが駿兄が買ってくれたんだっていつも言うもん」 まだ持っててくれたんだ。 ユウタは小さかったし、安物だからとうに壊れて捨てられていると思っていたのに。 思わずにやけそうになるのを必死でこらえる。 「僕もお兄ちゃんだから、駿兄みたいに買ってあげるんだ!」 などと鼻息荒くむちゃくちゃ可愛いことを言いながら、ようやく決めたらしいユウタはひとつを棚に戻し、もうひとつのぬいぐるみを大事そうに両手で持ってレジに向かう。
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