1.影踏み

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遊び慣れたいつもの公園に夕焼けが差し掛かり、同級生達は母親に怒られないようランドセルを手に取って早々に家路を辿った。 子供たちの笑い声が途絶えた公園は閑散となり少し肌寒くも感じる。 気づけば公園には僕と茜しか居なくなっていた。 「あーあ、また鬼のまま終わっちゃった。」 「茜は影踏み弱いよな。別に足が遅いわけでもないのにさ。」 「んー。……なんでだろう。」 茜は少し助走をつけて軽々と鉄棒の上に座り込んだ。 茜は運動神経が悪い訳では無い。 むしろクラスの中ではいい方で、鬼ごっこでもかくれんぼでも缶蹴りでも茜が鬼のまま遊びが終わる事はほとんど無かった。 それなのに影踏みだけはとても弱かった。 「ねぇ、晃くん知ってる?男女の友情ってありえないんだって。」 「突然なんだよ。」 脈絡のない言葉に少し驚いたが、さほど興味をそそられなかった。 そんな事よりも鉄棒の上に座った茜を見上げている事が気掛かりで僕は視線を落した。 最近まで同じくらいの身長だったのに、気がつけば茜は僕よりも成長していた。 母さんには「女の子の方が成長が早いのよ、晃一だってすぐ大きくなるわ。」なんて言われたけれど僕はとても悔しくて、いつか今みたいに首を痛めるほど茜を見上げる日が来るのではないかと、気が気ではなかった。
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