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「ママが見てたドラマで言ってたの。男と女の友情は存在しない、必ず恋をするんだ。って。」
「ふーん。」
「私恋ってまだ知らない。晃くんは恋した事ある?」
「僕だって恋なんか知らないよ。したこともない。僕はそんな事よりも今日の夕飯を知りたいね。ピーマンが入ってたら戦争だ。」
小学6年生になってもピーマンを食べれない僕に痺れを切らした母親が、最近になって毎日夕飯にピーマンを出してくる。
どうにかして回避しようとするが母親の策略には勝てず、結果は全敗。次こそは勝たねばならない。
「まだピーマン食べられないの?好き嫌いしてると大きくなれないよ。」
「うるさいな。嫌いなものは嫌いなんだよ。」
茜に言われたくなかった言葉を言われ、僕は少しイラッとした。僕の苛立ちを察したのか茜は話を戻しはじめる。
「由美ちゃんが言ってたんだけどね、恋をするとその人の事で胸が一杯になってご飯が食べられなくなるんだって。」
「なるほど。それは悪い話じゃないかもしれない。ピーマンが出たらそれを言い訳にして残せばいいのか。」
「もー。」
呆れた様子の茜を尻目に、そろそろかなと思い公園の入口に顔を向ける。そこには買い物袋を持った母さんが立っており、こちらに向けて手を振っていた。
「母さんだ。ほら、帰ろう。」
「……ねぇ、晃くん。」
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