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名前を呼ばれ茜を見上げる。
夕陽が差し込まれた茜の顔はよく見えず、僕は眩しくて右手で視界を遮った。
「本当に男女の友情が存在しなくて、恋がどんなものか知ったら。」
手の隙間から見えたのは鉄棒から飛び降りる茜の姿。砂埃を上げ地面に着地する。
茜の足は斜めに伸びきった僕の影を捉えていた。
「その時は私も晃くんに恋をするのかな。」
茜は照れているわけでも、茶化しているわけでもなかった。茜が何を考えているのか僕には分からず、下を向いている茜の横顔は少し悲しんでいる気がした。
「晃くんの影踏んじゃった。晃くんが鬼だね。」
「え…、あ!ずるいぞ!」
さっきまでの表情が嘘のように茜は笑っていた。
まだ冬の寒さが残る春の夕暮れ。
家が隣同士の僕らは昔からずっと一緒だった。それは中学生になっても変わることはないと、僕は信じて疑わなかった。
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