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ジュラシックパーク。ロストワールド。ジョーズ。
蘇った恐竜や凶暴化した動物を前に戦う映画はいくつかあるけれど、主人公たちはみんな運も強さも持っていた。
彼らが生還する様と引き換えに、私みたいな丸腰の脇キャラはあっけなくやられてしまう。
相棒となるべく人は、武器も持たずただ息を荒くしてるだけだし。
「小見さん、僕の方はいつでも準備できてます」
いや、彼を囮に逃げればいくらか生存率は上がるかも。
そんな卑劣な期待を抱きつつ、まずは目の前の生物を受け入れてみよう。
トリケラトプスだって見た目は粗暴だがもともとは草食系だ、うまくいけば手懐けられるはず。
「じゃ、じゃあちょっとだけ試してみようかな」
全身の細胞を頬と唇に集めて何とか笑みを作れば、するりと腕が解放された。
すぐ食される心配はなくなったが、恐竜に対し背中を見せてはいけない。
ここからが、脇役で終わるか主人公の座を勝ち取り無事に帰還できるかの勝負だ。
いまだ手のひらに吸い付くように握っていたグリップを見つめ、ゴクリと息を飲んで力を込める。
一つ、二つ深呼吸をし、三の合図で腕を振り上げて、隣で気を付けをして待つ西奴さん
――ではなく、足元にあるクッションへ向かって狙いを定めた。
「獲物が違うんじゃないの」
「そうですよ、小見さんっ!!!」と叫ぶ声は聞こえないことにし、「まずは試しに」と誤魔化して軽く鞭を振ってみる。
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