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秘密
里には時折塩を売る行商隊がやって来る。
通貨という物がないので物々交換で塩は取引される。
薪や木炭、農産物、獣肉などと塩は交換される。
山に囲まれたこの里の人間からすると、いくらでも手に入る薪が貴重な塩と交換出来るのが不思議なようだが。
この里の人間は塩の産地である海を見た事がないが、俺はある。
センターも内陸部の都市にありビル群の向こうに見えるのは山だけだったが、5歳の時の遠足で潮干狩りに行ったのだ。
初めて見る現実の海に皆恐れおののき泣き叫ぶ子供続出で潮干狩りどころじゃなかったが、流石にαグループ達は動じることなく暫く海岸を観察した後に波で長靴が濡れるのも構わず黙々とアサリを集め始めていた。
俺は長靴が汚れるのが嫌で、乾いた砂浜にしゃがんで湿った砂を触るのが精々だったと記憶している。
今の俺からすると考えられないくらい繊細な子供だった。
潮干狩りをした浜辺には松の少し植えられた公園はあったが、此の里にいくらでも生えているような薪にしやすい松はなかった。
此の時代の浜辺がどんな風景なのかは知らないが、おそらく此の里の様に簡単に薪が手に入る状態ではないのだろう。
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