典明

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典明

 典明は教室の片隅で自分のタブレットに配信されたアンケートを見つめて溜息を零した。  この秋典明が進学した国立高等学校は日本で唯一のΩを集めた学校である。  尤も、小中高の全寮制一貫校なので進学したところで寮の部屋が移ったりホームルームクラスが別棟になったりしただけなのだが。  アンケートは高校卒業後の進路希望についての物だった。  教育機会の平等を謳っている日本の憲法のお蔭でΩにも大学進学のチャンスはある。  だがそれはパートナーとなるαが認めたらである。  未だΩ特有の発情期を迎えていないΩにはパートナーのマッチング条件を希望する自由が与えられている。  Ωはαよりも圧倒的に数が少ない。  典明のいた幼児教育センターではバランスを取って入所させていたが、他のセンターではΩ1人に対しα10人などが当たり前だった。  Ωはαの共有財産である。  1人のΩに複数のパートナーという名のスポンサーがつく。  このアンケートに大学へ行きたいと答えればパートナーを大学に行かせても良いと思っているαとの見合いの場が設けられる事になる。  進学費用は勿論パートナーとなったα達が支払う。     
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